未分類

【ヴァンデミエールの翼-1巻】1話あらすじ感想まとめ【鬼頭莫宏】

著:鬼頭莫宏

有名作品:「なるたる」「ぼくらの」「なにかもちがってますか」「のりりん」「のボルダ」「双子の帝國」etc...

ヴァンデミエールの翼は月刊アフタヌーンにて1996年〜1998年まで連載されていた作品。

作者の連載デビュー作で、第1話「ヴァンデミエールの右手」は1995年に秋のアフタヌーン四季賞準入選している作品。




【1話】ヴァンデミエールの右手 あらすじ

主人公は少年レイ。10月の、少し風の強い日だった。

いつもと違う活気が湧いた村の様子を不思議に思い、賑やかな方に見に行ってみると、

そこには道のど真ん中を横切る大きな移動列車があった。

サーカス列車こそ長くないが、蒸気で動くスチームカーのようだ。乗り物のてっぺんには人が立てるように設計されており

上には野次馬のように寄ってきた村の人々を見下ろす数名の人が立っているのにレイは気づく。

同じ年ほどであるにもかかわらずビスチェのような露出の多いドレスに身を包んだ少女と目が合い、視線をかわす。

この少女こそがヴァンデミエールだった。背中に大きな純白の羽を生やした少女は悲しげな表情を浮かべながらこちらを見ている。

気づくと少年は、少し肌寒い秋の風と共に散る天使のはねを掴んでいた。


荷台の後ろに座って自己紹介をするヴァンデミエール

ある日、レイはいつものように荷台を引いたバイクで走っていると、歩いていたヴァンデミエールを村で見つけ、声をかける。

「いつでもそんな格好をしてるの?」とレイが聞くと、ヴァンデミエールは悲しげな表情で「これも宣伝のうちですから」という。

途中、バイクが壊れて動かなくなったため、レイは荷台だけを引いて届け先に向かおうとヴァンデミエールにお別れを告げるが

ヴァンデミエールは手伝わせてくださいというので、後ろから押してもらうことにした。

レイはヴァンデミエールに「君はいろんな街を旅できていいなあ。僕はこの村から出たことがない」というと

ヴァンデミエールは「きっとあなたの方が自由。私はまるで羽切りされた小鳥のよう。」といった。


別の日、レイの父親が経営する酒場にカーニバルの団長と思われる人物に連れられてヴァンデミエールは来た。

どうやら夜間に大人向けに興行するための場所を借りにきたらしい。

レイの父親はあっさり了承するが、自分の息子と同じ年くらいのヴァンデミエールを見て「まさかその子が?面倒は勘弁だぜ」と問いかけると

団長は「ご安心を。人間ではありませんから。」と言った。レイが驚いた表情を浮かべると、

ヴァンデミエールはレイの目の前で自分が人間ではないことを暴露されたことに戸惑いつつも

しかし立場上、なにもいうことができずただ悲しげに黙っていた。

交渉が成功すると、団長に連れられヴァンデミエールは酒場を出て行った。


後日、レイは友達と一緒にヴァンデミエールの属するカーニバルを見に行った。

空気を吸い込んで浮かぶ風船男や、猿のような見た目で自由に手が伸びる猿び男などが出場していたが

ヴァンデミエールは出てこなかった。

帰り道に友達がヴァンデミエールが出てこなかったことをつまらなそうに話すと

もう一人の友達が、ヴァンデミエールが芸人として舞台に出てこなかった理由として、

ヴァンデミエールがカーニバルの中でも、芸人という扱いではなく座長の慰み物であるからだという。

そして、以前レイがヴァンデミエールと一緒に歩いていたことを知っていた友達は、前後のやり取りは見ていなかった為

レイがヴァンデミエールのことを傾城買いをしたと勘違いし、そのことをからかい気味に話すと頭に来たレイは、友達と殴り合いの喧嘩になってしまう。

家に帰ると、その日の夜の興行に参加するためヴァンデミエールは酒場で待機していた。

手当をしてもらいながらヴァンデミエールは自分のことを打ち明ける。

「私本当に、人間じゃないんです。冷たいですよね」

そう言ってスカートを持ち上げ、下半身をレイに見せると、レイは驚いて言葉も出ずただヴァンデミエールを見つめるだけだった。


酒場には中年の男性ばかりが集い賑わっていた。助平心からか、ヴァンデミエールの舞台が気になっていたからだ。

団長が「奇科学の奇跡」と言って紹介したヴァンデミエールは、自律胴人形と言うらしい。

その瞬間、団長は「この酒場の少年に心を許したな」と耳元で囁きヴァンデミエールは小指を噛みちぎられる。

人間ではないから血こそ出ないものの、痛覚は少しあるのか「あっ!」と驚きのけ反るヴァンデミエール。

団長は自分の持ち物に意思が生まれたことが面白くないのか、レイに敵意を示しながら囁く。「これは罰だ」

ヴァンデミエールは服を脱がされ舞台上で羞恥にさらされると、ヴァンデミエールの下半身は機械で出来ていて

関節の接続部分の隙間からその構造が露出しており、まるで球体関節人形のようだった。

夜の興行とは、ヴァンデミエールが順番に客席のグラスに酒を注ぎに回り

その際本当に人間なのか真偽を確かめる体で、好きなように触っていいというものだった。

耐えかねたレイは思わず叫んでヴァンデミエールに駆け寄ろうとしたが

父親に足を引っ掛けられ勢いよく転倒する。

ヴァンデミエールに好意を抱いていることを知った父親が「色気付きやがって」と吐き捨て

レイをボコボコにして酒場から追い出してしまう。

残されたヴァンデミエールは、酒場の中年男性達に予定通り奉仕することとなるが

その冷たさからか「まるで死体を弄んでいるようだ」と表現されている。

時間が経ってレイが酒場に戻ると、一人で座り込むヴァンデミエールがいた。

事後であろうその表情が悲しそうで、しかしレイが戻ってきてくれたことに安心したのか無理して笑っているような儚げな笑顔だった。

レイはヴァンデミエールに向かって言う。「僕と一緒に街へ行ってくれないか」


ヴァンデミエールをバイクの後ろに乗せて、レイは街へ向かって走っていた。

家出するつもりなんだろう。ヴァンデミエールは言った。

「私は人間ではないのですよ、それでも」

レイは「きみを見た時、僕を外の世界へ連れ出してくれる、そんな想いがした」と言った。

ヴァンデミエールはレイの背中にもたれながら一言

「ありがとう、レイ」と言った。

レイは聞こえなかったが、ヴァンデミエールのその表情はカーニバルにいる時よりもとても安堵に満ちていて

ヴァンデミエールはレイについていくことで自由が得られることに心から安心しているようだった。

すると突然、バイクが故障し街へ向かう途中に止まらないといけなくなった。

ヴァンデミエールが何かに気がつき歩いていく。

その方向を見ると、そこには団長が立っていた。ヴァンデミエールは自分を道具のように扱ってきた団長と対峙する。

団長が言った。「これは背信だな、ヴァンデミエール。お前をこの火宅から解き放ってやろう」

その瞬間、団長が振り下ろした鞭がヴァンデミエールの体を右腕から左腰に向けて真っ二つに切り裂き

ヴァンデミエールは頭から芝生の上に崩れ落ちる。

レイが悲鳴を上げ、団長に向かって言う。

「ヴァンデミエールが何をした?」

すると団長は「もちろん少年にも償いはしてもらう」

そう言って振り下ろした鞭がレイの右手首を切り落としてしまう。

痛みで声が出せないレイはうずくまり、団長の方を睨むと

団長は「この程度ではすまさん」とちぎれたレイの手首を踏みつけ

「生きている限り逃れられない償いを与えてやる」と不適な笑みを浮かべる。

上半身だけになってしまったヴァンデミエールに寄り添われレイは目をつぶる。


気づくとベッドの上だった。

レイは4日間も眠っていたままで、熱にうなされていたらしい。

父親は何も言わなかった。カーニバルは村のどこにもいなくなっていて

最初から存在しなかったようで、それは不思議な感覚だった。

それからしばらくしてレイは村を出、街で知り合った仲間と事業を興し仕事続け、

順風満帆に暮らしていた。月日が流れレイもそこそこ歳をとった。

ずっとヴァンデミエールを連れてきたカーニバルを探していたのか

知り合いが街にカーニバルが来ていることを伝えてくれた。

レイが見に行くと、そこには昔見た風船男や猿び男がいたが

どちらもそのような芸が工夫がされている普通の人間だった。

団長を訪ねても、かつて村にスチームカーと共に来たドラキュラのような鋭い眼差しの団長ではなく

小さくて気の弱そうな高齢の男性であり、ヴァンデミエールと共にレイの右手を奪った団長ではなかった。

レイはヴァンデミエールのことを思ってからか、結婚していなかった。

「そろそろ結婚でもして落ち着けよ」

レイの右手をみて仲間の一人がつぶやく。

「お前の右手って妙に華奢だよな」

レイは答える。「だから、忘れられないんだ」と。

レイが癖で手を揉んでいるその右手は、昔舞台で団長に噛みちぎられた

小指のないヴァンデミエールの腕がそのまま移植されていた。

レイはその手首を見るたびに思い出すのだろう。

あの10月の風と共に、ヴァンデミエールのことを。

自分の右手を見つめながらヴァンデミエールのことを思い出すレイ

いかがでしたでしょうか?

鬼頭莫宏氏の作品は、登場人物の言葉が少なく、また説明もあまりないので想像力が必要になりますが

その分美しすぎて見惚れてしまうコマが多いこと、

表情やキャラクターが置かれている状況が切なくてつい世界観に没頭してしまうところが私の好きなところです。

また余白も多く人物が際立っている反面、背景や物の絵も細部まで綺麗に描かれており

細かい心情描写が天才的なので説明がなくてもストーリーがきちんとつながっているところが素晴らしいなと思います。

レイの置かれていた環境に目を向けると、レイにとってヴァンデミエールが来る前の世界は、窮屈で父親からも愛情を感じられず

ただ働き同然でこき使われる退屈な毎日だったのかもしれません。

ヴァンデミエールを見たことで、その美しさに心ひかれ、父親に刃向かったことで自分が置かれている環境に疑問が生まれ

結果的に家を出る決断ができたのかもしれないですね。

また、ヴァンデミエールの球体関節人形のような機械っぽくて硬そうな体と

上半身の胸の部分の柔らかそうな描写の対比がまた美しくて

ぜひ漫画の方で実際のコマをご覧になってほしいところです。

「ヴァンデミエールの翼」を読むなら以下のリンクから見れますのでぜひアクセスして

その美しい裸体描写をご覧下さいね!

新規登録キャンペーン実施中【Amebaマンガ】

最後まで読んでいただきありがとうございました!

-未分類
-, , , , , , , , , , , , , ,

© 2024 NIKIBLOG Powered by AFFINGER5